脳梗塞リハビリの基礎知識

ショックウェーブ療法について

ショックウェーブとは

知っているようであまり深くは知らない言葉ですが、日本語では“衝撃波”といいます。衝撃波とは何か。を端的に表現すると“音速を超えて伝搬する圧力の不連続面”です。もう少し分かりやすく、身近な現象を例に挙げてみますと、“雷鳴”と“打上げ花火”のようです。経験した方もおられるかと思いますが、雷鳴や花火が上がった瞬間、近くにいたときに感じるフッとした圧力が衝撃波なのです。他にも超音速旅客機から放たれるソニックブームや、潜水艦のプロペラ部分などに発生しているようです。

要は“何かとても大きな力が瞬間的に発生した時に生まれるエネルギー”というようなイメージだと思います。 (間違ってれば、どなたか優しくご教授下さい。)それを最初に医療で応用したものが、腎臓や尿管など臓器に発生した分泌物の塊(=結石という)を破砕する結石破砕術になります。

新しい治療法「ショックウェーブ療法」

ショックウェーブ刺激を、体表から与え、痛みや筋の状態を改善することを目的とした治療法です。世界各国で新しい治療法として取り入れられています。 ショックウェーブ治療器には 集束型 と 拡散型 の2種類があり、当センターで使用しているのは 拡散型ショックウェーブ療法 です。

集束型と拡散型の違い
引用:Maren C. K. et al. Radial extracorporeal shock wave treatment harms developing chicken embryos. scientific reports 1-5, 2015
集束型ショックウェーブ治療器 Focused extracorporeal shock waves therapy

特徴:衝撃波を集束させるためピンポイントに高いエネルギーを与えることが可能。
従来は腎や尿管の結石破砕術(ESWL)として用いられてきたが、近年、整形外科領域でも応用されており、一部保険診療内での実施が可能になってきている。医師が使用する治療機器である。
対象:肘の炎症(=テニス肘)、膝蓋腱炎、アキレス腱炎、足底腱膜炎などの慢性腱障害など、スポーツ障害や慢性腱障害などの整形外科疾患に対して使用されている。

拡散型ショックウェーブ治療器 Radial extracorporeal shock waves therapy

特徴:ハンドピース先端から放射状にエネルギーが伝搬するため、浅く広い領域の治療が可能。厳密には衝撃波ではなく、圧力波といわれている。低エネルギーの治療であるため、医師以外の理学療法士やトレーナーなどが扱うことが出来、汎用性が高く、スポーツ領域でのコンディショニングやリハビリテーション領域での普及が拡大している。
対象:筋・筋膜などの軟部組織の滑走障害、脳卒中後後遺症としての上下肢の痙縮や肩の痛みなど
当センターの使用機器:拡散型ショックウェーブ機器「インテレクトRPWモバイル」

メーカーHP:https://www.irc-web.co.jp/intelect_rpwmobile#

当センターでは、主に痙縮抑制のツールとしてショックウェーブ療法を行っております。他にも、脳卒中後後遺症としての“肩の痛み”に対しても実施しております。

ショックウェーブ療法の効果

ショックウェーブ療法は近年、多数の研究報告がなされております。特に神経リハビリテーション領域においては、TOPICSとして取り上げられる事も多くなってきており、私が先日参加した学会(大阪府理学療法士学術大会)でもランチョンセミナーのテーマにもなっており、徐々にその見識も広まりつつあります。 海外では、メタアナリシスという大規模な研究にてショックウェーブ療法の効果も認められており、ある報告おいて、“ショックウェーブ療法は脳卒中後の痙性抑制の治療として効果的である。”とされており、客観的にも効果があることが認められています。

(Cabanas-Valdés R, Serra-Llobet P, Rodriguez-Rubio PR, López-de-Celis C, Llauró-Fores M, Calvo-Sanz J. The effectiveness of extracorporeal shock wave therapy for improving upper limb spasticity and functionality in stroke patients: a systematic review and meta-analysis. Clin Rehabil. 2020 Sep;34(9):1141-1156. doi: 10.1177/0269215520932196. Epub 2020 Jun 8. PMID: 32513019.)

ショックウェーブ療法の実際

ショックウェーブ療法の改善例

痙縮で代表的なものといえば“足の突っ張り”ですが、当院でも多数の方がショックウェーブにより足の突っ張りが軽減されています。

当センターでの一般的な実施パラメーター

強度:2.0~5.0bar  周波数:5~12Hz  刺激数:1500~2000発/1set

  • 肩関節への介入でも効果が確認できます。
  • ご本人様の許可を得て、掲載しております。
  • すべての方で同様の効果が出るわけではありません。

当施設での使用感としても、確かに即時的に筋の緊張が低下し、痙縮抑制効果はある方が多いと思われます。その効果の持続性も、数日後も残存しているケースが多い印象です。特に痙縮の中でも末梢性の要素(=筋肉やその周辺軟部組織由来の)に対して効果があると思われます。
痙縮でお困りの方や、脳卒中後の肩の痛みでお困りの方がいれば、お気軽にご相談下さい。

参 考:日本運動器shock wave研究会http://josst.org/treatment.html#radial
更新日:2022/12/21

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